サービス業なんですか

「女性でハンターやってる人って大学でも殆どいないんで、なんだか新鮮ですよ」
「私はちょこっとやっただけだけど?」
何だかテンションが上がっているタクヤに対して、エミはきょとんとしていた。
「ライブチャットでゲームの話なんかして、通じる相手は殆どいないんですよ。FPSだとか言い出すとたいていは、解らないって嫌がられることが多いですから」
「私は友達にゲームが好きな人がいるから少し知ってるって、それだけ。後は仕事で接客してるからとか、そんなかしら?」
「接客って、サービス業なんですか?」
「うん。腕時計のショップ店員やってるの」
エミは腕時計をウェブカメラに向けた。
「あ! それってGショックのスピードモデルじゃないですか?」
「あら、詳しいのね? そう、Gショックの5600シリーズ。世間ではスピードモデルで有名みたいね」
Gショックの通称スピードモデルはアクション映画で登場した影響でかなり知名度が高い。エミはその映画が公開される前から知っていたが、勤めているショップでスピードモデルを、という客は多かった。正確にはGショック・DW-5600E-1シリーズ。仕事柄でこちらで覚えているが、5600系といえばスピードモデルで通っている。10年以上の人気モデルで定番でもある。
「いいなー。やっぱりカッコイイですねー」
タクヤは心底うらやましいという口調だったが、定価でも2万円程度で、腕時計にしては安いほうなので「買えば?」とエミは返す。

ライブチャットサイトでの出来事

「TPSっていうのは、サードパーソン・シューティングゲームの略ですよ。画面に自分の姿が映ってるタイプです。自分が見えずに武器だけ見えてるのがFPS、ファーストパーソン・シューティングゲームで、ハンターはTPSです、って、こんな話、退屈ですか?」
「いいわよ。シューティングってバンバン撃つ奴でしょ? ハンターはカタナとかナイフとかそんなだけど?」
「視点でジャンル分けしてるんですよ。車ゲームなんかでも運転席視点はFPS扱いで、車が見える視点をTPSって呼ぶんですよ」
「ふーん。車ゲームは一つあるけど、視点? それ変えられるんだ。私、ずっと車が見える状態でやってて、それでも目がぐるぐるになっちゃうの」
「ゲーム慣れしてないと3D酔いするんですよ。最近のゲームはカメラワークが激しいんで慣れてる人でも3D酔いすることがあるんですよ」
「私、運動神経弱いから」
「動体視力がいい人でもゲーム画面で酔うことありますよ」
「ドキュメント番組なんかでカメラがガタガタ揺れてるのは苦手なんだけど、そういうこと?」
「ですね。あれってFPSみたいなもんですから、弱い人だと確実に3D酔いしますね。長く観てると視力も落ちますし」
タクヤは活字には弱いがどうやら映像のほうにはめっぽう強いらしく、それっぽく説明した。

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